暗号通貨の分裂をフォークと呼びます。
ブロックチェーンの技術的なところは確かに難しいけど暗号通貨に接するのであればフォークのプロセスやその意義は基礎知識として理解しておきましょう。特にビットコインのフォークの歴史を知ると暗号通貨がグッと身近になりますよ。
暗号通貨のフォーク(分裂)とは
フォークはブロックチェーンがこれまでのスペックを変更する際に起こる現象でハードフォークとソフトフォークの2種類あります。
ハードフォークとソフトフォークの違い
ハードフォークはブロックサイズやコンセンサスアルゴリズムの変更など、一方のソフトフォークは新たな機能の実装などソフト的な仕様変更がきっかけとなって発生します。
両者の違いはそれまでのソフトウェア(ノードソフトやウォレット)が利用できるか否か。利用できない場合はハードフォークとなります。ハードフォークではブロックチェーンは枝分かれして元々あったブロックチェーンはそのまま残りながら新たなブロックチェーンが生まれます。
またソフトフォークでも古いソフトウェアが作るブロックをそれ以上本家ブロックと認められなくなった(新しいソフトウェアが互換性をなくした)場合にもネットワークが分離され新しいブロックチェーン(=ハードフォーク)となります。
分裂コインの誕生と付与
上記のようにフォークによってチェーンが分離した際に分裂コインが誕生する可能性があります。預けてある取引所にも拠りますが基コイン保有者には同じ数量の新コインが付与されるのが一般的。
取引所がハードフォークへの対応と新通貨の付与をアナウンスすると、それまでウォレットに保管していたユーザーがそれらの取引所に対象通貨を送金し預けるのは分裂コインを貰うのが目的。
残念ながら日本国内の取引所では金融庁がそれを許していないのか分裂コインの付与はありません。その後の取扱いサポートはあるんですけどね。
※2020年1月31日追記※
現時点で国内取引所はハードフォークに対して分裂通貨の時価をある時点での日本円で保有者に還元する方法が一般的となっています。
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ビットコインの分裂・フォークの歴史
2009年に誕生したビットコイン(BTC)、ブロックサイズは1MBで生成時間は10分。このビットコインの仕様が原因である問題が発生、ビットコインの分裂の歴史が始まります。
ビットコインのスケーラビリティ問題
ビットコインの認知度が向上しユーザーが増えるとともに利用頻度も急激に増加、2017年にはトランザクションは溜まる一方でした。送金したくても中々送れない状態、いわゆる送金詰まりです。
トランザクション数に対して1MBのブロックサイズでは小さすぎて処理しきれない。この頃は送金が完了するまでに数時間またされたり手数料が高騰したりとサトシ・ナカモトのビットコイン原論文にある目指す姿とは程遠い状態に。これをビットコインのスケーラビリティ問題といいます。
この状況をどうにか打破しなければとノード開発者や大手マイナー(=マイニングプール)が施策を考えていましたが非中央集権型のビットコイン、本来であれば皆の意見、多数決をもって方向性を決めるべきがそうはなりませんでした。
2017年8月1日・ビットコインキャッシュ(BCH)誕生
スケーラビリティ問題への解決に向け、署名部分を切り離して管理しトランザクション自体のサイズを小さくする方法(Segwitと呼ばれる。ノード開発大手のブロックストリーム社主導)と、ブロックサイズそのものを大きくする方法(大手マイナーViaBTC主導、ジハン・ウー、ロジャー・バーが参画)のふたつの解決方法が提案、主張されました。
発想の全く異なる双方のチームは一切歩み寄ることなく2017年8月1日、ビットコインはついにハードフォークを実施します。ViaBTC主導チームがブロックサイズをこれまでの1MBから8MBに変更しました。この枝分かれした8MBサイズブロックチェーンがビットコインキャッシュ(BCH)です。
真のビットコイン議論
もとのビットコインブロックチェーンもソフトアップグレードを実施(Segwit実装、ソフトフォーク)、ライトニングネットワークの利用が可能となりました。
SegwitとはSegregatedWitnessの略でトランザクションから署名部分を外すことを可能とするアップグレードです。これについては、もはやサトシが描いたビットコインの仕様とは違うよね、という皮肉を込めて現在はコアコイン(=BitcoinCore派のコイン)やセグウィットコインとも呼ばれたりします(笑)。
真のビットコインはどちらなのかと話題になりますがサトシ原論文を読む限りビットコインキャッシュが本来の姿を継承しています。
ビットコインキャッシュの分裂
ビットコインキャッシュはその後もアップグレードを行いブロックサイズは32MBに!勿論コアコインのような送金の遅れもなく時価総額で1位になるのも時間の問題だろうと皆が思っていた。
しかし誕生から1年数か月後、再びフォークが起こります。BCHノード開発大手のBitcoinABC派(ViaBTC、Bitmain、ロジャー・バー)とBitcoinSV派(クレイグ博士とnChain、Coingeek)の対立です。
BitcoinABCはこれまでにない機能を追加するソフトウェアアップグレードを提案主張。一方のBitcoinSVは更なるブロックサイズの拡大(128MBへ)と、ずっと以前に削除されたビットコインのコードを復活させることを主張。
ビットコインからのハードフォークでは共に一丸となっていた両者ですが悲しかな人間の性でしょうか、今回も双方に歩み寄りはありませんでした。
2018年11月15日・リプレイプロテクションなしのフォーク決行
11月15日、当初の予定通りフォークは決行。従来のビットコインキャッシュチェーンはABC派がソフトウェアアップグレードを加える一方でSV派はブロックサイズを128MBに変更、ハードフォークの実行です。
ハードフォークを行う際にはリプレイプロテクションという機能を持たせることが常。これは分岐後に発生するトランザクション(=取引の記録)がどちらのチェーンのものなのかを区別する役割。これによりリプレイアタックと言われる攻撃を未然に防ぎ二重送金されない仕組みになっています。
ところが今回のABCとSVのフォークではこのリプレイプロテクションが実装されませんでした。2種類のビットコインキャッシュは要らない、マイナーのハッシュパワーに任せてどちらかがBCHチェーンの優位性を獲るまで(相手のチェーンを潰すまで、ハッシュパワーを奪い取るまで)戦い続けることを両者が選んだのです。
2018年11月26日・ビットコインABC&ビットコインSV誕生
前代未聞のハッシュ戦争と界隈は大騒ぎでしたが結局10日間ほどでこの騒動も収束します。
11月26日、SV派のCoinGeekよりティッカーシンボル(BCH)には拘らなこと、近い将来リプレイプロテクションを実装する予定であることを正式にアナウンスしました。
これにより両者の争いは終息、ABC派はこれまでのBCHを引継ぎSV派は新たにBSVというティッカーシンボルとなりました。
ビットコインとBitcoinABC(BCH)とBitcoinSV(BSV)
今回のビットコインキャッシュハードフォークに関してはどちらのビジョンも理解できるので正直優劣をつけ難いです。
ただビットコインキャッシュが誕生した経過や意義を振り返ると今回もBitcoinSVがサトシの原論文に沿ったアクションでしょうか。ハッシュ戦争の終息宣言もSV派のCoinGeekの発言が歩み寄りな印象で大人の対応でしたし。
一方で現在のビットコインはそのミッションが随分変わってしまいました。ブロックサイズがそのままなので実用性に乏し過ぎる。暗号通貨のシンボルとしてのみ存在しています。
以上がビットコインの分裂の歴史。実は他にもビットコインから分裂したコインがあるのですが今現在存在意義が薄いので敢えて記載していません。そんな意味では暗号通貨のフォーク・分裂とは成長、ブラッシュアップのための行為とも受け取れますね。